服には、一生付いてまわる一枚がある。
織ネーム。下げ札。ICタグ。
生まれた工場を知っていて、素材を知っていて、これからは「履歴」まで持ち歩く——その一枚を、京都で81年間刷り続けてきた会社の話をします。

戦争が終わった、翌月。
京都で、印刷が始まった。
御社は「SINCE 1961」と名乗っておられます。けれど社史の最初の一行は——「昭和二十年九月、印刷デザイン企画業創立」。タグの一生は、焼け跡から始まっています。16年ぶんの歴史が、名乗りから消えています。
81年間、この数字を
一度も足していない。
工場の生産能力は、それぞれ別のページに、別々に書かれている。合算した資料は、どこにも存在しない。
※ 現行サイト各工場ページの月産能力を合算(カンボジアは非公開のため除外=保守計上)。上海の洗濯ネームは別工程の可能性があり要確認。
※ 1961年8月、村田精版印刷株式会社を設立——初代代表取締役に村田八重子が就任。戦後の京都で、女性が代表に立った。
×1.0
あなたが今日、着ている服。
誰がデザインしたかは、表に書いてある。
その内側に、必ず一枚ある。
ブランド名。サイズ。素材。原産国。洗い方。この一枚が無い服は、世界に一着も存在しない。
私たちは、ここを作っている。
糸の一本、インクの一滴、箔の一枚まで。誰も見ないところを、81年。
企画から、刷って、
縫製ラインに届くまで。
副資材は「買う」ものではなく「作る」もの。デザイナーが引いた線を、版にして、インクに変えて、糸に織り込む。その全工程を、一社で持っている。
日本で決めて、
アジアで刷る。
商社ではない。自社の印刷機が、4カ国にある。中国依存を続けるか、脱中国へ舵を切るか——どちらの答えにも、すでに工場がある。
名前は出ない。
けれど、ここに在る。
あなたのクローゼットに、私たちが刷ったものが、おそらくもう入っている。
2027年、この一枚が
パスポートになる。
EUのデジタル製品パスポート(DPP)。服に「履歴」の同梱が求められる時代へ。
そのままスクロールしてください。タグをスキャンします。

コットン ポロシャツ
「そのうち」の話では、
もう、ない。
EUの日程は、すでに官報に載っている。この領域を自社サイトで語っている国内の副資材メーカーは、調べたかぎり一社もない。ムラタが最初に名乗れる。
売れ残り衣料・靴の廃棄が禁止(EU大企業から)。「捨てられない」時代に入った。
繊維製品が優先製品群に確定済み。製品固有IDと履歴の同梱が求められる。
IDの媒体・素材の情報・自社工場の記録。3つとも、すでに持っている。
IDを載せる媒体
RFID、QR付き下げ札、織ネーム。履歴を持ち歩くのは、結局この一枚。3種類とも自社で刷れる。
素材の情報
リサイクル素材、バイオマスペーパー、生分解性フィルム、FSC®認証紙。証明つきで語れる。
製造工場の記録
京都・中国・ベトナム・カンボジア。自社の工場だから、いつ・どこで・誰が作ったかを書ける。商社には書けない。
タグの一生は、
捨てられて終わらない。
現行サイトのトップに、タイトルの無いYouTubeが1本。中身は「使用済み輸送袋の完全循環リサイクルシステム」——4カ国に自社工場を持つ会社にしか回せない輪が、名前も付けられずに置かれていた。この輪こそ、DPP時代の切り札になる。
- 回収:納品先の工場・倉庫から、使用済み輸送袋を回収
- 再生:素材に戻す。自社の生産ラインで処理
- 再製造:ふたたびパッケージとして刷り、同じ工場へ
- 記録:この輪をDPPに書き込む。循環したことが、証明になる
服の裏側に、81年。
次の81年は、履歴を刷る。
タグは、服の身分証明書になる。それを刷る会社が、京都に1945年からある。